「留学先はどこにしよう?」「語学学校のクラスは?」と、海外生活への期待で胸がいっぱいになる留学準備期間。しかし、そんな華やかな準備の裏で、多くの方が後回しにしがちなのが「日本国内での公的手続き」です。
「現地に到着してから、日本に残してきた家族宛てに想定外の住民税の請求書が届いた」 「帰国した後に、健康保険や年金の未納分が発覚して慌てて役所に駆け込んだ」
これらは、決して珍しい話ではありません。「留学会社や学校が教えてくれると思っていた」「親がやってくれていると勘違いしていた」という、「知らなかった」「誰も教えてくれなかった」という理由で、後から困ったり後悔したりする留学生は後を絶ちません。
留学は、出発前の準備からすでに始まっています。手続きについて「人任せ」にせず、「自分事」として積極的に調べ、正しい知識を身に付けること。その主体的な姿勢こそが、海外で予期せぬトラブルに直面した際の「生き抜く力」となり、帰国後のキャリアを支える大きな資産へと繋がっていきます。
本記事では、中高生とその保護者の皆様、大学生、そして副業やフリーランスとして働く社会人の方まで、すべての留学希望者が渡航前に見落としてはならない重要な公的手続きについて、日本の法律や税制に基づき徹底解説します。
本ブログで紹介している情報は、2026年6月現在の公的制度に基づいたものです。公的な情報や税制については、今後変更される可能性もあるため、ご出発前には必ず最新の情報をしかるべき公的機関の窓口やウェブサイトにてご確認ください。
また、本記事に掲載している内容はあくまで一般的な情報であり、お一人おひとりのご年齢、これまでの所得、ご家族の扶養状況などによって実際の対応が異なる場合があります。個別具体的な判断が必要な場合は、必ずお住まいの市区町村役場や管轄の税務署、税理士などの専門家にご確認・ご相談ください。
なお、アフィニティ留学は留学の手続きやサポートを専門に行う留学会社であり、日本国内における公的手続きの代行、および個別の税務・法務相談は承っておりません。あらかじめご了承いただけますようお願い申し上げます。
目次
【留学期間別】日本の公的手続きはどう変わる?(1年未満 vs 1年以上)

日本の住民基本台帳法や税法では、留学期間が「1年以上」になるか、それとも「1年未満」にとどまるかによって、住民票の扱い(海外転出届の提出義務)が大きく変わります。それに伴い、住民税、健康保険、国民年金の手続きもガラリと変化します。まずはその違いを正しく理解しましょう。
ケース①:「1年未満」の短期留学・ワーホリの場合
一般的に1年未満の短期留学、または滞在が1年未満となるワーキングホリデーなどの場合、生活の本拠が日本から完全に離れるとはみなされません。そのため、原則として海外転出届は提出せず、住民票を日本に残したまま渡航します。
- 住民票: 日本に残します。
- 住民税: 毎年1月1日時点で日本国内に住民票がある場合、通常通り前年の所得に応じた住民税の支払い義務が継続します。留学期間中に納期が重なる分については、事前に口座振替の手続きをしておくか、出国前に一括で支払う準備をしておきましょう。
- 健康保険(国民健康保険など): 加入が継続するため、留学中も保険料の支払い義務があります。よって留学中に一時帰国した場合でも通常通り日本の病院で診察を受けることができます。住民票を残しておく最大のメリットとして、留学中に海外の医療機関で急な病気やケガをして治療を受けた場合、帰国後に申請することで日本の保険基準に合わせて一部が払い戻される「海外療養費制度」を利用することができます。
- 国民年金: 20歳以上の方の場合、強制加入が継続するため、留学中も保険料の支払い義務があります(大学生などの場合は「学生納付特例制度」の申請が可能です)。
ケース②:「1年以上」の長期留学やワーホリ(YMSなど)の場合
大学への正規留学や、1年以上の語学留学の場合、原則として出発前に市区町村役場へ「海外転出届」を提出し、住民票を抜く(除票する)必要があります。 ここで注意したいのがワーキングホリデー(ワーホリ)です。一般的なワーホリは1年間の滞在が多いですが、イギリスのYMS(Youth Mobility Scheme)のように最長2年間滞在できる国や、現地でビザを延長して結果的に1年を超える滞在になるケースもあります。「ワーホリだから一律で住民票を残す」のではなく、実際の想定滞在期間が1年以上になる場合は、海外転出の手続きが必要になる点を覚えておいてください。
- 住民票: 抜く(海外転出届を提出)。
- 住民税: 住民税は「1月1日時点で日本国内に住所があるか」で課税されるかどうかが判定されます。1月1日をまたいで海外転出しており、日本国内に住所がない年度の住民税は課税されません。ただし、出国する年までに発生した住民税の未納分がある場合は、出国前に全額支払うか、代わりに納付してもらう「納税管理人」を指定する必要があります。
- 健康保険: 住民票を抜いた時点で、国民健康保険の被保険者資格を喪失します。留学期間中の保険料はかかりませんが、海外での医療費に対して日本の健康保険(海外療養費制度など)は一切使えなくなります。そのため、万が一に備えて別途「海外留学保険」等への加入が絶対に不可欠です。
- 国民年金: 住民票を抜くことで、国民年金の「強制加入被保険者」からはずれます。ここでの選択肢は2つあります。
- 支払いを止める(資格喪失): 保険料を支払わない選択ができます。この期間は「合算対象期間(カラ期間)」と呼ばれ、将来の年金受給資格期間(10年以上)にはカウントされますが、将来もらえる年金額には反映されず減額の原因になります。
- 任意加入(継続して支払う): 日本国籍の方であれば、海外在住期間中も「在外任意加入」をして保険料を支払い続けることができます。これにより、将来の年金額が減るのを防げます。日本国内に親族などの協力者がいない場合でも、日本国内における最後の住所地を管轄する年金事務所が窓口となり、本人名義の預貯金口座からの「口座振替」や「クレジットカード納付」、あるいは「海外からの送金」によって任意加入および保険料の納付手続きを行うことが可能です。
⚠️ 重要:所得税と住民税の「時期のズレ」による勘違いに注意!
所得税は「その年の所得からその場で引かれる」のに対し、住民税は「前年の所得に対する税金を、翌年6月から1年かけて後払いする」という仕組みになっています。そのため、「1月1日時点で日本にいなければ住民税はかからない」というのは、あくまで「これから新しく課税される分(新年度分)がかからない」という意味であり、すでに課税されて支払い途中になっている過去の住民税は、出国前にすべて支払う義務があります。
【具体例:令和8年12月31日までに海外転出(出国)する場合】
- 免除される(かからない)税金 :令和9年度の住民税。(*令和8年(1月〜12月)の所得に対する住民税。)
令和9年1月1日時点で日本に住民票がないため、本来なら令和9年6月から支払うはずだった令和9年度の住民税は課税されません。- すべて支払う義務がある税金 :すでに課税されている令和8年度の住民税。(*令和7年(1月〜12月)の所得に対する住民税。)
令和8年度の住民税は「令和8年6月〜令和9年5月」の12回に分けて給与天引き(または納付書)で支払うスケジュールになっています。 そのため、12月末(1月1日前)に出国する時点では、まだ残り5ヶ月分(令和9年1月分〜5月分)の支払いが終わっていません。この未払い分は、出国のタイミングで会社の給与から一括で差し引いてもらう(一括徴収)か、納税管理人を指定して代わりに納付してもらう必要があります。
【社会人・副業向け】留学中もフリーランス収入がある場合の納税義務

近年、仕事を辞めて留学する社会人の方や大学生の中で、「留学中も日本のクライアントからリモートで業務委託を受け、副業やフリーランスとして収入(ライティング、プログラミング、デザインなど)を得たい」というケースが増えています。 この場合、日本での納税義務(所得税・住民税)は、前述の「住民票を置いていくか(居住者)」それとも「抜いていくか(非居住者)」によって大きく分かれます。
① 「1年未満」の留学:住民票を置いていく場合(「居住者」扱い)
- 所得税: 所得税法上、日本に住所がある人は「居住者」に分類されます。居住者は国内・国外を問わずすべての所得(全世界所得)について日本での納税義務があるため、留学中であっても翌年の2月16日〜3月15日の期間中に通常通り日本で確定申告を行う必要があります。
- 住民税: 1月1日に日本に住民票があるため、前年の所得に対して通常通り課税されます。
【よくある疑問】日本のフリーランス収入+海外でのアルバイト収入がある場合は?
住民票を日本に残して(「居住者」として)1年未満の留学やワーホリをする方から、「日本のクライアントからのフリーランス収入と、現地で働いたアルバイト収入の両方がある場合、税金はどうすればいいの?」というご質問をよくいただきます。
結論からお伝えすると、「日本のフリーランス収入」と「海外のアルバイト収入」の両方を合算して、翌年に日本で確定申告を行う必要があります。これが日本の「全世界所得課税」のルールです。
日本で確定申告を行う際、海外のアルバイト先で現地の所得税がすでに天引き(源泉徴収)されている場合は、同じ収入に対して二重に税金がかかるのを防ぐため、日本の確定申告で「外国税額控除」を申請することができます。 ただし、日本と渡航先との間の「租税条約(学生特例など)」によって、現地でのアルバイト収入がそもそも免税(無税)になっている場合は、現地で税金を払っていないため外国税額控除は使えません(その場合も、日本側での合算申告自体は必要となります)。
② 「1年以上」の留学:住民票を抜いていく場合(「非居住者」扱い)
- 所得税: 非居住者の場合、日本国内で発生したとみなされる「国内源泉所得」のみに日本の所得税が課税されます。(所得税法第5条2項、第7条1項3号)
- 役務の提供地が海外の場合: 日本のクライアントから業務委託を受けて仕事をする場合でも、非居住者であるあなたが「海外(留学先の国)」でパソコンを使って作業を行うのであれば、税法上の役務提供地は「国外」となります。したがって、原則として「国外源泉所得」となり、日本では所得税は課税されません(クライアント側が源泉徴収をする必要もありません)。(同法第161条1項12号イの反対解釈)
- 国内源泉所得に該当する場合: ただし、提供する成果物が「著作権の譲渡や使用料」に該当する場合(例:作成したイラストやコンテンツの権利を日本企業にライセンスして使用料を得るなど)や、日本国内にある不動産からの収入がある場合などは「国内源泉所得」となり、日本での課税(原則20.42%の源泉徴収、または日本での確定申告)が必要になります。(同法第212条1項、第213条1項1号、復興財源確保法第28条)
- 住民税: 1月1日時点で日本に住民票がないため、非居住者期間中に得た所得に対する住民税は課税されません。
【よくある疑問】日本で非課税でも、留学先の国で申告・納税が必要になる?
「日本の会社からの業務委託を海外で行うから、日本の税金は非課税だ!留学先でのアルバイト収入分だけ税金を払えば問題ないんだ!」と考えるのは大間違いです。ここが多くの留学生が陥る国際税務の罠です。
結論から言うと、住民票を抜いて長期留学(目安として1年以上やYMSなど)をする場合、「現地のアルバイト収入」と「日本からのフリーランス収入」を合算して、留学先の国でタックスリターン(確定申告)を行う義務が生じる可能性が極めて高いのです。理由は以下の2点にあります。
- 労働を行っている場所(役務提供地)が「留学先」だから
報酬が日本のクライアントから日本の銀行口座に円建てで振り込まれていたとしても、あなたが実際にパソコンを叩いて労働している場所は「留学先の国」です。そのため、現地政府から見れば「自国内で発生した課税対象の所得」とみなされます。 - 滞在期間によって現地の「税務上の居住者」になるから
アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダなどの多く国では、一般的に「年間183日以上」その国に滞在すると、税法上の「居住者(Tax Resident)」として扱われるようになります。現地の居住者になると、その国でのアルバイト収入だけでなく、日本から得ているフリーランス収入も含めた「全世界所得」を現地政府に申告・納税する義務が生じます。
なお、このケースでは日本側は非課税、留学先側だけで課税となるため、二重課税は発生しません。純粋に「留学先の国のルールに則って、すべての収入を現地に申告する」という形になります。
【要注意】プロでも一概に「わかりません」となる境界線
ここで非常に重要な注意点があります。あなたのフリーランスとしての仕事内容が、「単なる作業(人的役務の提供)」なのか、それとも「著作権の使用料・譲渡」にあたるのかの境界線や、渡航先との租税条約の適用可否などは、契約書の内容や業務の実態によって個別に判断されます。
これらは、すべての実態を精査しなければ、専門家であっても「一概に判断はできません(わかりません)」。だからこそ、自己判断や人任せにせず、日本出国前には日本の管轄の税務署へ、そして現地に到着した後は現地の税務当局や学校の留学生支援オフィス、現地の税理士などのしかるべき窓口へ、直接確認・相談するようお願いいたします。
住民票を抜いていく場合の「準確定申告」と「納税管理人」

1年以上の留学やYMSなどの長期滞在を予定し、海外転出(非居住者へ該当)をする場合、その年の1月1日から「出国日」までに日本国内で生じた所得について、以下のいずれかの方法で清算手続きを行う必要があります。
方法A:出国日までに「準確定申告」を行う
出国前に、後述する「納税管理人」の届出を出さない場合は、出国する日までに、その年の1月1日から出国日までの所得について税務署へ「準確定申告」を行い、税金を納めます。(もしくは還付を受け取る。)
方法B:出国前に「納税管理人」を選任する(推奨)
出国前に日本国内に居住する親族や税理士などを「納税管理人」に指定する方法です。「納税管理人」とは、あなたの代わりに税金の申告や納付、税務署からの書類の受け取りを行う人のことです。 手続きは簡単で、出国前に税務署へ『所得税・消費税の納税管理人の届出書』を提出するだけです。これを出しておけば、出国時のバタバタした時期に準確定申告をする必要がなくなり、翌年の通常の確定申告期間に、納税管理人があなたの代わりに確定申告・納税を行うことができます。
【補足】マイナンバーカードの国外利用とe-Taxについて
制度の改正により、海外転出届を出した後もマイナンバーカードが失効せず、継続して利用できるようになりました(出国前にお住まいの役所窓口での手続きが必要です)。 これに伴い、非居住者であっても海外からe-Tax(電子申告)システムを利用して、自分で確定申告を行う仕組み自体は整っています。しかし、非居住者の申告内容に不備があった場合の確認や、還付金を受け取るための国内口座の管理、税務署からの重要書類の物理的な受け取りなどの観点から、国税庁は引き続き、国内に「納税管理人」を選任することを推奨します。万全を期すためにも、ご家族などに納税管理人をお願いしておくのが安心です。
【カウンセラーからのアドバイス】手続きを調べるプロセスこそが、留学を成功させる「人間力」に繋がる

ここまで、少し難しく感じられるかもしれない税金や法律の手続きについてお話ししてきました。 中高生や大学生の皆さんは「難しそうだからお父さん・お母さんに任せよう」、社会人の皆さんは「忙しいから後回しでいいや」と思われたかもしれません。
しかし、私たちアフィニティ留学のカウンセラーが皆様に一番お伝えしたいのは、「この手続きを自分で役所や税務署に問い合わせて調べるプロセスそのものが、留学準備の最も価値あるステップである」ということです。
留学先である海外に一歩足を踏み入れれば、そこは誰も手取り足取り教えてくれない世界です。ビザのトラブル、家主との契約、銀行口座の開設など、すべて英語や現地の言葉で、自分の力で調べて交渉しなければなりません。日本にいるうちから「誰かが教えてくれるのを待つ」「エージェントがやってくれる」という受け身の姿勢でいると、現地での生活で壁にぶつかってしまうことが多くなります。
日本の役所のウェブサイトを読み込み、分からないことは自分で電話をして確認する。その「自分で知ろうとする姿勢」と「行動力」こそが、海外でたくましく生き抜くためのサバイバル能力を育てます。そしてその経験は、帰国後に「自ら課題を見つけて解決できる人材」として、皆さんのキャリアを輝かせる最大の資産(人間力)になるはずです。
私たちは、手続きを代行することはできません。しかし、皆様が自立した留学生として一歩を踏み出せるよう、心からの応援と、必要な知識の道標を全力でサポートさせていただきます。
正しい情報を得るための公的機関リンク集
公的手続きに関する正式な根拠や最新の申請書類については、必ず以下の公的機関のウェブサイトをご確認ください。
- 役所の手続き全般(住民票・健康保険など) 総務省:「住民記録(住民基本台帳等)」
- 国民年金の海外転出・任意加入 日本年金機構「海外へ転出(出国)するとき」
- 非居住者に対する所得税の課税のしくみ 給与所得者の方で国外転出を予定されている方へ
- 出国するときの税務手続き(準確定申告)国税庁「出国をするときの所得税の確定申告(準確定申告)」
- 納税管理人制度について No.1923 海外勤務と納税管理人の選任又は解任
- マイナンバーカードの国外転出時の手続き マイナンバーカード総合サイト「国外転出をする場合は、どうすれば良いですか?」
まとめ
留学前の公的手続きは、期間やご自身の収入状況によって一人ひとり最適な形が異なります。「知らなかった」で後悔しないために、まずはご自身の手で一歩、調べてみませんか?分からないことがあれば、役所や税務署の専門家が丁寧に教えてくれます。自分事として準備を進め、万全の状態で最高の留学へ飛び立ちましょう!
アフィニティでは経験豊富な専任スタッフがサポートさせて頂いております。高校・大学・専門学校等で年間120件以上の説明会や相談会を開講させていただいており、内閣府認証NPO法人留学協会の正会員としても、健全な留学のご案内を心がけていますので安心してご相談ください。 オンライン面談も承っておりますので、以下のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。








