ニュージーランドへの留学を通して多くの経験を積んだ佐久長聖高校3年生の渡邉桜妃さんにお話を伺いました。
トビタテ!留学JAPANの留学生として現地での生活や現地高校での生活を体験し、自身の探究テーマである「教育と幸福度の関係」にも取り組んだ彼女。留学の動機や現地での気づき、将来の展望などをお話伺いました。
目次
留学先とプログラムについて
国 | ニュージーランド |
都市 | オークランド |
教育機関 | Birkenhead College |
渡航時期 | 7月下旬 |
留学期間 | 1か月間 |
留学カテゴリ | 現地高校 |
ニュージーランドを選んだきっかけは?
「私のトビタテ留学の探究テーマが『教育と幸福度の関係』でした。そのテーマに沿って、日本よりも幸福度の高い国で調査をしたいと思っていました。最初は幸福度世界一位のフィンランドに行きたいと思って留学の計画を考えていました。
でも、私は今受験生ということもあり高校生の夏休みの期間しか留学できず、フィンランドもその時期に夏休み中になってしまうために留学が難しかったです。
そこで南半球に目を向けたところ、ニュージーランドが幸福度の高い国として候補に挙がり、最終的に決めました。」
現地の高校生活は?
「本当に楽しかったです!自由度がとても高くて、思ったよりもマオリ文化が根強く残っていました。例えば、マオリ語の授業やハカの授業があり、実際に受講することができました。マオリ語は難しくて、周りの友達に助けられながらなんとかついていった感じです。
日本では先生が教室に来て授業をするのが一般的ですが、ニュージーランドでは各教室に先生がいて、生徒が移動する形でした。テストは想像より簡単で、授業の選択肢も豊富でした。アートやデザイン、アート史など幅広い科目があって、自分の好きなことに集中できるのがすごく良かったです。
私はパソコンでデザインをする授業と、絵を描くペインティング方の授業、数学、ハカ、音楽、英語の授業を取りました。特に印象的だったのは、多様性が尊重されていることです。アジア系や南米出身の留学生も多く、日本のようにみんなが同じ髪の色ということもなく、本当に自由な環境でした。
この辺りの認識もテーマである幸福度にもかかわってくるかもしれないと思いました。とにかく自由度が高く自分の意思で決められることが多いので、好きなことに熱中できる利点があると感じました。
一方日本はカチッとしすぎてしまっているとも感じましたし、選択科目の自由さが少ないために、好きではない科目を勉強しなくてはいけませんが、それゆえに幅広い知識が身についていることを理解しました。
高校の先生方は本当に優しくて、フレンドリーで、お願いしたアンケートやインタビューにも答えてくださった!留学生をサポートしてくれる先生は本当に優しくて、困ったらなんでも助けてくれたし、嫌な顔せずに何度も対応してくれたので、本当に嬉しかったし頼りになりました!
高校ではありませんが探究活動の一環として現地の小学校に見学へも行ったのですが、九九を習わないから暗記もしていない様子で驚きました。そのためみんな答えも全然違うのにそのまま進んで行ってしまうから『え!?いいの!?』と思うこともあり、日本の教育がいかにしっかりしたもので、一人で自立してできるようなシステムにはなっているんだということにも気が付き、日本の良さも同時に感じました。」
生活面での違いは?
「お風呂文化は日本の方が良いですね。ニュージーランドではシャワーを2、3日に1回というペースで、毎日シャワーを浴びることに慣れている私は少し戸惑いました笑。
また、今回の滞在時期はニュージーランドでは冬でしたが、地元の長野と比べると寒さを感じず、まるで日本の春のような気候でした。」
ホストはどんな方々でしたか?
「お世話になったのは、ホストファザー、ホストマザー、小1の息子さんと4歳の娘さんの4人家族でした。
とても賑やかで、家族愛が溢れていて、日本に帰ったら家族に会いたくなるくらい素敵な家族でした。特に印象的だったのは、家族が『愛してる』という言葉を日常的に使う文化です。
ただ、4歳の子どもに振り回されることもあって、手を焼くこともありましたが、全体としてとても良い時間を過ごせました。喧嘩が絶えない毎日でホストマザーも大変そうでした。
最近は集合住宅が増えているようですが、私の滞在したエリアはまだまだ一軒家が多く土地も広いので、ご近所を気にせず大きな声を出したり、ドアの開閉の音や足音を気にすることもないようでした。
ホストファザー、ホストマザーはとても優しく、ビーチにもたくさん連れて行ってもらいました。
食事は日本よりも油っぽいし、炭水化物よりもタンパク質メインな気がします。カナダの留学を前にしたことがあったのですが、イギリス領だった歴史が共通しているのかカナダの時と似ている食事だったので慣れており困ることはありませんでした。
思い出に残っているのはラムとマッスル(Mussel)という貝で、ラムは多少臭みがあったのも印象的でした。デザートにコーンに盛り付けてくれたホーキーポーキーという」アイスクリームは本当に大好きになりました!
ランチはホストマザーが作って下さって、パンがふわふわでとても美味しいサンドイッチでした。
日本食のクオリティの高さには改めて気が付きました。ラーメンが恋しくて日本に帰国してからすぐラーメンを食べに行きました笑
ただ、1か月間違う食文化で生活することに関しては特に困ることはなく異文化にはうまく適応できたかと思います。
要因としてはホストマザーがフィリピンとのハーフということもありアジアの文化にも理解のある方で助けてもらったと思います。」
留学中に大変だったことは?
「日本人の留学生が8人ほど同じ学校にいて、一緒にいることも多かったんですが、人間関係で少し悩むこともありましたが新しい出会いがあったので良かったです。
それと、私は受験生だったので、留学と受験勉強の両立が難しくて、頭の中がぐるぐるしていました。でも、この1ヶ月の留学が私の人生にとって大切な経験になったと思います。
バス移動が基本の交通手段でした。運転はかなり荒くしっかりとどこかに捕まっていないと飛ばされてしまう感覚もなかなか日本では味わったことはないですし、目的地でしっかりとボタンを早めに押していないと止まってくれなかったりするので、移動の時は結構気を張りました。目的地を通り過ぎてしまう他の生徒もよく見かけました。そういう意味ではバスは大変でした。」
特に頑張ったことは?
「現地小学校やオークランドの日本人補習校に自分で問い合わせて見学をさせていただいたり、校長先生と話をしたりということができて、このフィールドワーク(トビタテの探究活動)を計画して行動に移してくるというのは特に頑張れたと思います。
一人で行ってしっかりと探究活動もしてこれたので、とてもいい経験になりました。
オークランドの方では、補習校は日本語でコミュニケーションが取れ2時間くらいお話をさせていただきました。特にそこで働かれている方々はニュージーランドの教育にも日本の教育にも精通されている方々で、民族のバックグラウンドや仕事やキャリアへのモチベーションの違いなど、様々な方向からの視点で教育について考えるきっかけをいただきました。
ニュージーランドでは日本と違って大学に行くということそのものが社会的なステータスになるという考えは薄いといった現地ならではの感覚も教えていただき、たくさんの学びを得ることができました。
現地の小学校では1日密着させていただくような形で、子供多たちと一緒に授業を受けることもできました。
裸足で走り回っている生徒がいたり、どこでも座ったり寝そべったり。日本なら間違いなく注意されることが、ニュージーランドでは普通であることに驚きました。
休み時間が異様に多く、日本とは全然違いとても自由だと感じました。
ただ、この自由度に関して驚いたことがあって、それは認識の違いでした。
留学の前に日本で自分の高校の生徒に向けてアンケートを取りました。そしてニュージーランドの現地高校でも同じ内容のアンケートを取ったのですが、自由度があると認識している生徒が少なく、本人たちはあまり自由であると感じていないということを発見しました。
今の生活を自国だけでやっているとそういうことに気が付くのは大変なんだと思わされ、外に出てみたり、他のものと比べてみて初めて自分の置かれている状況をより客観的に認識できるものなのだと改めて学べました。
ここに気が付けたのも非常に良かったです。」
トビタテの探究結果
「テーマの『教育と幸福度』については、今まとめているところですが、今回の留学中に触れて比較しながら考えた自由度は幸福度には密接に関係してくると思っています。
また、大学を卒業することを進路選択の手段としていない、学歴社会みたいな構図になっていない社会というのも幸福度に関わってきていると思いました。
自分がやりたいことを自由にできる環境だからこそ、周りからの評価もそこまで重要ではないし、純粋に自分のやりたいことや挑戦したいこと、やりがいを感じれることをやっていけるというのは幸福度に関わってきていると考えています。」
留学生活を振り返って
「この留学を通して、これまで気づいていなかった日本の良さにも多く気づけましたし、ニュージーランドの良さもたくさん知ることができました。
特に、はじめは日本の教育はダメだと思って留学に行きました。ですが実際に比較してみることで初めて見えることがたくさんありました。」
今後の留学生へのアドバイス
「行こうか迷っているなら、絶対に行った方が良いと思います。行かないとわからないことがたくさんありますし、たとえ思った結果と違ったとしても、その経験から得られる発見や学びは大きいです。
挑戦できる選択肢があるなら、最大限に活用してチャレンジしてみてください。私も、次はフィンランドへの留学に挑戦したいと思っています!」
改めて外に出ることで見えてくることがたくさんあり、自身や自分の置かれている状況を客観的に認識できます。それを身に染みて感じることができるのも留学の良さです。
一方でただ留学をすればこのような経験をできるわけではなく、渡邉さんのように自分からアクションを起こすことでたくさんの扉が開かれると思います。頑張る姿勢で能動的に留学に挑めたからこそ、その姿勢を見た周りの人が手を差し伸べてくれたことでしょう。
「教育と幸福度」という壮太なテーマで簡単に答えが出せるものではありませんが、彼女の探究心はこれからも続いていくことでしょう。これからも新たな視点を見つけ、成長し続ける渡邉さんの未来がますます楽しみです。彼女がこの経験を糧に、さらなる挑戦に踏み出していくことを心から応援しています。
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