「アメリカの大学は入るのは簡単だけど、卒業するのは難しい」とよく言われていますが、実際どうなんでしょう。アメリカの大学は、日本の大学にある入学試験がなく、出願書類で入学審査されます。そのために入るのは簡単と言われているのかもしれません。しかし、アメリカの大学も日本の大学と同様に大学によって入学の難易度が違います。それは、留学生の場合、入学条件として英語力や学力が問われます。アメリカの大学に入学してからは、できるだけ良い成績をキープしておく必要があり、これは日本の大学と同じですが、留学生の場合は英語のハンデあるため、単位を取っていくのが難しいことで卒業が難しいと言われているだと思います。では、アメリカの大学に入学後からどのように授業が進められているのでしょうか。アメリカの大学によって異なるところはあると思いますが、見ていきましょう!
初日にオリエンテーション実施
アメリカの大学に到着後、初日にオリエンテーションが実施されます。留学生の場合は英語力を判断するためにプレースメントテストがあり、どの科目を履修できるか参考にされます。留学生はTOEFL iBT®やIELTS™などの英語試験が入学条件のひとつになっていますが、プレースメントテストがある理由は2つ。1つ目は、出願時の英語試験結果だけでは授業についていけるか判断ができないということ。2つ目は、現地学生も最初の学期に履修するEnglish Composition(英作文)という科目を留学生は受講できるかのどうか。English Compositionは日本でいうと国語のようなもので、文学作品や詩などをたくさん読み、エッセイなどを書くことになります。ちなみに授業ではエッセイの書き方の基礎を教えてはくれません。そのため、プレースメントテストで少々悪い結果を出した場合、ESLを2科目+簡単な一般教養科目を受講したり、かなり悪い結果を出すとESLの科目だけを受講するケースがあります。ESLは、英語を母語としない留学生が英語力を補強するための英語クラスのことで、英語(リーディング、ライティング、スピーキング、リスニングの4技能)を学びながら、スタディスキルを身につけます。プレースメントテスト結果が悪いからといって退学になることはありませんのでご安心ください。プレースメントテスト結果で担当アドバイザーと相談しながら履修登録を行い、授業料を支払います。最近では、アメリカに渡航する前にオンラインで履修登録をすることがあります。オリエンテーションではキャンパスツアーをはじめ大学についてや生活面の説明があります。生活面では銀行口座の開設の仕方などです。オリエンテーションは同時期に入学した留学生との交流ができる機会があります。(※大学によって内容が異なります。)
学期初日から授業スタート
学期初日から授業がスタートします。シラバス(コース概要)が配布され、シラバスには授業スケジュールやテストの回数、成績評価について書かれていますので、必ずチェックしておきましょう。まずは1週間の授業の流れをつかみましょう。教室に入ったら、できるだけ前の席に座ることをお勧めします。日本人は教授の死角となる席に座りがちですが、アメリカの大学ではNGです。教授の目が届く席に座る方がベストです。教授の目が届かない死角の席だと無視されやすく、意見など発言しにくくなります。特にクラスが少人数の場合は、教授との距離が近いので授業は受けやすいですが、研究型大学や総合大学では学生定員が100名というクラスがあります。そのため、教授の説明を一方的に聞く機会が多くなります。英語力に不安があり、また授業についていけるか自信がない場合は、小規模の大学やコミュニティカレッジなどに留学する方が良いかもしれません。
Add & DropとWithdrawalとは
学期開始の1~2週間はAdd & Drop期間となり、履修した科目を取り消したり、新たに科目を追加履修することができます(科目数を新たに増やした場合は、授業料を追加で支払うことになります)。つまり、Add & Drop期間はお試し期間みたいな感じです。人気の教授や自分の履修すべき科目については、担当アドバイザーに確認したり、日本人留学生の先輩からアドバイスをもらうと良いでしょう。
Mid-Term Exams(中間テスト)が終わった後にWithdrawal(履修取り消し)の期間があります。中間テスト結果が60%未満の場合は、履修取り消し勧告を受ける可能性が高いです。Withdrawal勧告を受けた場合は、履修取り消しするか否かは教授に確認しながら自分自身で決断します。中間テスト時点で60%未満であったとしてもその後に挽回できるなら、履修取り消しはしなくても良いかもしれません。挽回できる見込みがないなら、履修取り消しをすると良いでしょう。履修取り消しは成績に傷がつきません(授業料の払い戻しはありません)。履修取り消し勧告を受け、後半挽回できず、その結果F(不合格)を取ってしまったら、成績表にFがつき、GPA(評定平均値)として計算されます。F=0点となるため、GPAを下げることになります。Fを消すには再履修し、A~Cの評価を得らなければ、Fを消すことができませんのでご注意ください。
授業と成績評価について
成績評価については、一般的に出席、授業への参加、レポート、テストなどの総合点を100点満点とし、次のように成績が定められています。大学によってはA+やA-、B+・・・などもっと細かく評価するケースがあります。
総合点 | 成績(評価) | ポイント(評点) | ESL | 一般教養・専門科目 |
90~100 | A | 4 | 合格 | 合格 |
80~89 | B | 3 | 合格 | 合格 |
70~79 | C | 2 | 合格 | 合格 |
60~69 | D | 1 | 不合格 | 合格 |
0~59 | F | 0 | 不合格 | 不合格 |
アメリカの大学は授業に出席することが当たり前です。遅刻3回で欠席1回になるケースもあり、また欠席回数が規定の回数に達すると自動的に成績がFとなることがありますので、必ず確認しておきましょう。さらに授業中に教授は黒板に書くことが少なく、教授が説明するのを聞きながら、ノートにメモを取らなければなりません(=ノートテイキングといいます)。あとは授業中に発言することです。質問があったり、クラスメイトが発言したことに対して意見を言ったすることが当たり前になっています。如何に授業に参加しているかがポイントです。
放課後や空き時間は予習と復習を行います。予習では次の授業で習う教科書のチャプター(30~50ページ)を読んでおくことです。事前に習う内容を把握しておくと、教授の説明を聞き取れたり、ノート亭キングもでき、ディスカッションにも参加しやすくなります。小テストや中間テスト、学期末テストの対策としてその日に受講した授業の復習が重要です。予習と復習を毎日しっかりとやっておけば、成績は取れるはずです。たいていの日本人留学生は月~金の平日は勉強に専念し、金曜日の授業が終了してから土曜日までは遊び、リラックスします。日曜日は金曜日の復習と月曜日の予習に専念しています。
アメリカの大学は学業成績を4段階評価で平均点を計算されます。これを評定平均値 (GPA:Grade Point Average)といいます。アメリカの大学は2.0以上ないと卒業ができません。また、留学生は学生ビザ保持者として2.0以上キープしなければなりません。GPAが2.0未満になるとプロベーション(観察処分)が取られ、担当アドバイザーとの面談で指導され、2.0以上に成績を上げなければなりません。改善されない場合は退学処分になります。
評定平均値(GPA)換算方法の例(2学期制の場合)
上記の成績評価表も併せて確認ください。
科目 | 学期 | 成績 | 単位 | ポイント* |
科目A | 春学期 | B | 3 | 9 |
科目B | 春学期 | B | 3 | 9 |
科目C | 春学期 | A | 3 | 12 |
科目D | 春学期 | C | 3 | 6 |
科目E | 春学期 | C | 3 | 6 |
*ポイント=成績評価のポイント×単位数
GPA=ポイント合計÷単位合計
2.8 = 42 ÷ 15 ⇒ GPA 2.8
オフィスアワーとチューターとは
授業でわかないことがあれば、授業中に質問することもできますが、授業外ではオフィスアワーが設けられています。オフィスアワーは教授がオフィスで待機している時間帯のことで、教授のオフィスへ行き質問や相談することができます。授業でわからないことがあれば、積極的にオフィスアワーを利用すると良いでしょう。
自分が書いたエッセイやレポートなどのライティングで文構成や文法に自信がない場合は、Writing Centerで無料でチェックしてくれます。その他には、Tutor(チューター)という個別指導してくれる制度もあります。最近では数学が苦手という学生が多くいるので、数学のTutorに聞きに行けば、無料で数学の問題の解き方を教えてもらえます。Tutorは学生がアルバイトをしていますが、その科目が得意で教えられるということで大学側が学生に依頼しています。日本人留学生もTutorとしてアルバイトしています。留学生は勉強が留学の目的になっていますので、アルバイトは原則できません。ただし、学業との両立ができると判断された留学生は大学キャンパス内でのアルバイトを許可されています。
留学は勉強が目的であり、留学生は成績をキープしなければなりません。学期期間中の平日は勉強に専念し、休日や学期休みは遊びます。オンとオフの切り替えがしっかりとできれば、アメリカの大学を卒業することは難しいことではないでしょう。